こだわり

20代のころにロバート・キャパという伝説的な戦場カメラマンを知ってから、写真というものが好きになりました。私が思ういい写真に共通しているのは、人が写っていて何かそこに流れている物語を想像させてくれる、という事です。

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この人は、なぜ、そんな表情をしているのか。この子供の瞳の先には、何があるのか。一瞬でも、その写真に感情が移ったとしたら、それはとても特別で素敵な事なんじゃないかと最近思うようになりました。

仕事柄、不動産の物件紹介に使っている写真は、リビングであったり、その部屋からの眺望であったりと、人が写っている写真は全くありません。その反動でしょうか。私が会社のフェイスブックに使っている写真には、出来るだけ人や子供を写しています。

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どんなに立派な建物や雄大な風景の写真よりも、私は生身の人間が写っている写真の方を選びます。それは、私がなによりも人が好きで、その人の歴史やストーリーに興味があるからです。だからこそ、今後も私は人を撮り続けていくと思います。

いつか、ロバート・キャパみたいな写真を撮りたいと本気で思っています。特に、彼が撮った子供の写真には優しさが溢れています。キャパは言っています、「君がいい写真を取れないのは、あと半歩の踏み込みが足りないからだよ」。

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# by tak6542 | 2012-12-07 23:18

ジャッキー

不動産業界で働く前、東京六本木の飲食店で働いていました。そこで出逢った人たちをたまーに思い出します。ある夜、系列店から一本の電話が入りました「今から団体で30人くらい、そっちに行くから、用意していて」。私が働いていたスポーツカフェの奥にあるVIPルームは、急ピッチでグラスなどを用意しました。

それから数分後、既にほろ酔い状態の団体客がVIPルームに入ってきました。私はその中の一人を見て、ハッ、としました。まさか!? ジャッキー!? チェン?! あまりにも普通に入ってきたので、私は拍子抜けし、同僚のサニーに確認しました。サニーは、にこっ、と頷きました。

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それから、赤ワインのボトルが次々と抜かれ、その部屋はパーティールームと化しました。その間、私はそのジャッキー・チェンと思われる男性を何度もチェックしていましたが、まだ半信半疑でした。あまりにも普通で、しかも想像していたよりも小さい。

そうこうしているうちにカラオケが始まりました。聞こえてきたのはジャッキーの代表作の一つ「プロジェクトA」の主題歌。すると、全員が総立ちになり、曲に合わせ、狭いVIPルームの中を行進し始めました、それもワイングラス片手に。みんな陽気に行進をしています。私は映画のワンシーンを見ているかのような錯覚に陥り、一瞬我を忘れました。これは本物なのかもしれない。

赤ワインが15本以上空になり、2時間のパーティーが終わろうとした時、問題が発生しました。付添いの日本人のクレジットカードがきれないのです。おそらく一日で上限を超えていたのでしょう。その様子を見ていたあの男性が私を呼び、カードを私に手渡しました。そのアメリカ製の黒いクレジットカードには英語で「JACKIE CHAN」。支払いは一発OK。本当に、今、目の前にいるのは、私が子供のころに夢中になっていたあのジャッキー・チェンその人なのかもしれない。

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そして、その時がやってきました。帰り際、いつの間にか寄ってきた背の高いブロンドの女性達が記念写真をお願いしています。その男性は快く了解し、両手に花の状態で二人の女性の肩に手をまわしました。あれっ、あんなに背が高かったかなぁ? 私は目線をその男性の足元に落としました。私は、思わず、にんまりとしてしまいました。

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その男性は、バレリーナの草刈民代さん並みに綺麗なつま先立ちをしているのです。まるで映画そのもの。顔を見ると、そこにはあのコミカルで愛嬌のあるいつものジャッキースマイル。私は確信しました、本物のジャッキー・チェンが、そこにいる。

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# by tak6542 | 2012-12-02 00:34

寅さん

私が小さかったころ、漁師だった父のつかの間の楽しみ、それは最新作のジェームス・ボンドを映画館に見に行くことでした。父は私が小学生になると、何度か私を映画館に連れて行ってくれました。勿論、私は007の何がおもしろいのか殆どわかりませんでしたが、映画館を出た父は、とても満足し興奮しているみたいでした。

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そんな父の影響なのか、私も映画が好きになり、友達と一緒に、もしくは一人でも佐世保の映画館によく行くようになりました。あの頃はハリウッド映画がとても好きでヒット映画の他にもアカデミー賞を取った作品(ダンス・ウィズ・ウルブス)などもよく見に行っていました。

その当時、どうしても理解できない事がありました。それは、寅さんの「男はつらいよ」です。なぜ大人は、こんなハンサムでもない四角い顔の人の映画を見るのか、それも正月に。とても不思議でした。そんな私も20代になり、ある時、たまたま寅さんを見ました。あれ!? なんか面白い。この映画は一体なんなんだ、衝撃でした。

それから、第一作(1969年作)をレンタル屋で借り一人で見ました。若い寅さんが生き生きとしています。私は人情味あふれる純粋無垢な寅さんに完全に魅了され、知らず知らずのうちに、寅さん好きの典型的な大人の日本人になっていました。

東京に住んでいた頃、たまに葛飾区柴又に行っていました。帝釈天や草団子屋、それに江戸川の土手に行くと、そこには寅さんの雰囲気がまだ確かに残っています。田舎育ちの私にとって、柴又は心落ち着く場所になっていました。

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これまで色々な映画を見てきましたが、こんな人に逢いたいなぁ、と本気で思わせてくれたのは寅さんです。喜怒哀楽が詰まった映画「男はつらいよ」、そして、寅さん、私にとってのヒーローです。

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# by tak6542 | 2012-11-23 23:22

マッツォーニ:イタリアから帰ってきた男

18年ぶりの再会、そんな出来事がつい先日、佐世保の万津町で起こりました。朝7時過ぎ、少し冷え込んできた佐世保朝市に行くと、高校卒業以来会うことのなかった友人:マッツォーニは、川内蒲鉾(かまぼこ)の白孝屋でちくわや蒲鉾を売っていました。

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久々に会うマッツォーニは、昔と変わらない少年のような笑顔で私を迎えてくれました。風のうわさで聞いていたイタリア遊学は本当で、通訳やガイドをして10年程パドバという街で暮らしていたそうです。パオロ・ロッシとはお茶のみ友達、アレッサンドロ・ネスタはただのイタリアの兄ちゃん、等々、サッカー好きの私はマッツォーニの武勇伝を面白おかしく聞いていました。

流転の人生の果て、今はこうして親戚の蒲鉾屋で働いているが、今年の4月に一念発起し、なんと10月に宅建の試験を受けたそうです。結果は34点、予想ではギリギリの線らしいのです。よくそんなに勉強できたなと私が聞くと、マッツォーニは話し始めました。

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朝3時から働き、8時過ぎに朝市が終わり、そのあとは蒲鉾の配達、仕事が終わるのは夜の8時。そんな中、配達の途中に宅建のCDを聞いたり、信号で止まれば参考書を開いたりと、とにかく必死で勉強したということです。私は、そんなマッツォーニの話を聞きながら、胸が熱くなりました。どんな状況にあっても、やる男はやっぱり頑張っているんだなと。

その日の夜、私は家族とマッツォーニの蒲鉾を食べました。普通の蒲鉾に比べ、その蒲鉾はもっちもっちで弾力があり、特別に美味しく感じられたのは気のせいでしょうか。美味しい蒲鉾をありがとう、不屈の男:マッツォーニ。今度会うときは、どんなイタリアンジョークが聞けるのか楽しみです。

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# by tak6542 | 2012-11-16 23:31

今年初め、東京から福岡に引っ越してこようと決めた時、一番に喜んでくれた人がいます、それは、私の母です。18歳で家を出てから、母は事あるごとに「もう、よかけん、早よ、こっちに帰ってこんね」と言っていました。私は、そんな母の口癖を聞くたびに、田舎には絶対に帰らんぞと、知らず知らずのうちに、意地になっていたのかもしれません。

そして、昨年の3月、東日本大震災が起こり、私のそんな考え方は大きく変わりました。それまでは東京で自分の家族を持ち、生活していましたが、大きな意味での家族を強く意識するようになり、娘の将来の事も考え、決断しました。

敬虔なカトリックである母は、毎週日曜日のミサは勿論のこと、よく教会に行きます。そこで、祈ります。何か大きな心配事があっても、「マリア様にいっぱいお祈りして来たけん、大丈夫よ」と母は言います。何か良い事があれば、「いっぱいお祈りしよるけん、お恵みのあるとよ」と母は言います。

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私は、そんな母が凄く好きです。これまでどれだけの心配をかけ、どれだけ私の為に祈ってもらったか分かりませんが、母はいつでも私の事を想い祈ってくれました。そして、私は福岡に引っ越してきて、教会に行くようになりました。いつの間にか、母の背中を見て育った自分が、今、ここにいます。

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# by tak6542 | 2012-11-10 23:53